第7回 日本在宅薬学会学術大会に寄せて

理事長 狭間 研至

 薬学教育6年制の3期生が現場で活躍を始め、調剤報酬も在宅療養支援へのシフトを明確に示すなど、時代は急速に変わりつつあります。
 立地に依存しないタイプの薬局という意味での、薬局の第3世代化を提唱してきた本会は、在宅医療にかかわらず薬物治療の成果を自らの手で確認し、薬学的評価を加え、薬物治療の適正化へと貢献しうる第3世代の薬剤師像(薬剤師3.0)を提案するに至りました。
 今の薬剤師は、在宅医療の現場や薬局の店頭で、一体何を考え、何をしようとしているのか。是非、あなたもその現実を目撃し、体験していただきたいと思います。暑い大阪で、熱い皆様とお目にかかれることを楽しみにしております。

第7回日本在宅薬学会学術大会開催にあたって

大会会長 菅野 彊

 ものごとが変化発展していくには、止揚という瞬間を経過することが大切です。止揚! 今までのものが、相互浸透を繰り返しながら、新たな発展段階に行きついた瞬間です。つまり、止揚以前の量的な拡大がないと、止揚には至らないわけです。
 第7回日本在宅薬学会学術大会大会会長を引き受けるにあたって、この大会は日本在宅薬学会の歴史の中でどういう位置付けになるかを考えてみました。日本在宅薬学会会員は第6回学術大会を盛会裡に終えて以降、1,000人を超えました。私はこのことを大変意義深いことであると思っております。
 日本在宅薬学会は当然一人の会員から始まりました。そして3年9か月、理事長狭間研至はじめ理事の諸先生方によるリードで、拡大と発展を成し遂げて参りました。その歴史はまさに量的な拡大の歴史と見ることができますが、発足当時のパラダイムシフトの転換ともいえる提案が基本にあることは明白です。
 その提案は、“薬剤師がバイタルサインをとりフィジカルアセスメントをすることは当然である”という、刺激的のみではなく、来るべき時代の変化を見通したものであり、まさにイノベーションでした。同時に組織を有機的に結び付け、自己成長していけるように、ディレクター、エヴァンジェリストというリーダーたちの組織づくりを行ったことが、会の質的発展と量的拡大のスピードを飛躍的に高めました。
 理事長狭間研至は常に「バイタルサインを採れるようになることが目的ではない。それは単なる手段である。」と話します。そして、「バイタルを採って、薬剤師が何をするかが問題である。」と続けます。「私がそれを提案することはできない。なぜなら、私は医師で、薬剤師ではないからです。」と、私たちにど真ん中のストレートを投げ込みます。
 つまり、“在宅薬学の止揚”を、私たち薬剤師が成し遂げなければならないのは、自明のことです。しかし私は、いま日本在宅薬学会は量的な拡大の時期であって、止揚はもう少し先だろうと考えています。従ってここで、近い将来日本在宅薬学会が止揚に至るには、今何が必要なのか? というテーマが大きく浮かび上がってきます。
 それは医師や看護師の技術とは相対的に独立した薬剤師技術を構築することだと考えています。その技術とは、医薬品情報検索技術であり、副作用を集団でチェック・予防する技術であり、薬物動態学的な判断をする技術であると思います。この技術構築こそが、第7回日本在宅薬学会学術大会に課せられた大きな課題だろうと思います。実行委員長の髙﨑潔子さんや実行委員の皆様とともに努力して参ります。